今回はAM-GM不等式(相加相乗平均)について3つの証明方法を解説します。
1. AM-GM不等式
ai (i=1.2.3⋯ n)が
ai>0を満たすとき、
n1i=1∑nai≥ni=1∏nai
となる。等号成立条件はa1=a2=a3=⋯=anとなる。
na1+a2+…+an≥na1a2…an
具体的に書くとこうなります。
2. AM,GMの意味
AM・・・Arithmetic Meanの略です。日本語では、算術平均や相加平均と訳されます。
GM・・・Geometric Meanの略です。日本語では、幾何平均や相乗平均と訳されます。
3. 証明
どれも数学的帰納法を用いています。条件翻訳以外はn=1とn=2の時の証明はそれぞれ共通しているため、ここに書きます。
n=1の時は、a1≥a1となり、成りたちます。
n=2の時は、
a1≥0,a2≥0のとき、
a1+a2−2a1a2
=(a1−a2)2≥0
したがって、
a1+a2−2a1a2≥0
⇔ a1+a2≥2a1a2
∴2a1+a2≥a1a2
3.1. 微分による証明
n=kのとき、k1i=1∑kai=α 、 i=1∏kai=β とおくと、
n1i=1∑kai−ki=1∏kai≥0
⇔α–βk1≥0
ai>0(i=1,2,3⋯n)
が成り立つと仮定する。
n=k+1のとき、
f(z)=k+1z+i=1∑kai−(zi=1∏kai)k+11
∴ f(z)=k+1z+kα−(βz)k+11
関数f(z)を定義する。
関数f(z)の目的
この関数はz=ak+1であれば右辺を移項した求めたい式となる。そのため次に微分を行い、最小値を調べる。
f(z)をzで微分すると、
f’(z)=k+11−k+1βk+11zk+1−k
f’(z)=0を満たすzをz0とすると、
k+11−k+1βk+11z0k+1−k=0
⇔k+11=k+1βk+11z0k+1−k
z0k+1k=βk+11
z0=βk1
増減表を書くと、

したがって、z0は最小値となることがわかったため、
f(z0)=k+1kα+βk1−βk+11⋅βk(k+1)1
=k+1kα+βk1−βk(k+1)k+1
=k+1kα−k+1kβk1
=k+1k(α−βk1)
≥0
したがって、f(z)≥0であることが分かった。f(ak+1)のとき、
f(ak+1)=k+1ak+1+i=1∑kai−(ak+1i=1∏kai)k+11≥0
⇔k+1i=1∑k+1ai−(i=1∏k+1ai)k+11≥0
∴k+11i=1∑k+1ai≥k+1i=1∏k+1ai
不等式はn=k+1のときも成り立つことがわかる。
したがって、数学的帰納法により、不等式が成り立つことが分かった。
また、等号成立条件はa1=a2=a3=⋯=anとなる。
3.2. 2kを用いる証明
[1]m=2kのとき、2k=αとおくと、
2ka1+…+a2k≥2ka1…a2k
∴αa1+a2+⋅⋅⋅+aα≥αa1a2…aα
ai>0(i=1,2,3⋯m)
が成り立つと仮定する。
次に、m=2k+1のとき
2k+1a1+a2+⋯+a2k+1
=2αa1+a2+⋯+a2α
=21{(αa1+…+aα)+(αaα+1+…a2α)}
≥21(αa1a2…aα+αaα+1aα+2…a2α)
今回の仮定で重要なのは数の個数と数のすべてが正の整数であればすべて仮定の通りに不等式を適応できるということである。つまり、α個の数があれば不等式を適応できる。だから、右側のαaα+1+…a2αに仮定を適応しました。
2つの要素の相加相乗平均と考えると、αa1a2…aα≥0、αaα+1aα+2…a2α≥0より、
≥αa1a2⋅…a2α
=2αa1…a2α
=2k+1a1a2,…a2k+1
m=k+1の時も成り立つ。
したがって、数学的帰納法より、mが2のべき乗の時、不等式は成り立つ。
[2]ai>0(i=1,2,3⋯n)、自然数nを用いると、
na1+⋯+an=d
⇔i=1∑nai=nd
ここで、dについて表すと
d=2k2kd
⇔d=2k2kd+nd−nd
=2k(2k−n)d+nd
=2ki=1∑nai+i=1∑2k−nd
[1]では2ka1+…+a2k≥2ka1…a2kが成り立つことを示したので同様に成り立つと考える。今回も数は2k個あると考えられる。
≥2ka1a2…and2k−n
両辺を2k乗すると、
d2k≥a1a2…and2k−n
dn≥a1a2…an
d≥na1…an
したがって、自然数nについて、以下の不等式が成り立つ。
∴na1+a2+…+an≥na1a2…an
また、等号成立条件はa1=a2=a3=⋯=anとなる。
3.3. 条件翻訳
a1a2…an=αn
とおくと、AM-GM不等式に代入すると
na1+a2…+an≥α
⇔ a1+a2+…+an≥nα
ai=αbi(i=1,2,3⋯n)の時をそれぞれの等式・不等式に代入して考えると、
b1+b2+…+bn≥n かつ b1b2…bn=1 bi>0(i=1,2,3⋯n)
を満たすこととでAM-GM不等式を証明できる。
n=1のとき、明らかに成り立つ。
n=kのとき
b1+b2+…+bk≥k かつ b1b2⋯bk=1
が成り立つと仮定する。
b1≥1,b2≤1となるように並び替え、b1b2=mとすると、
(b1−1)(b2−1)≤0
∴ m+1≤b1+b2
n=k+1の時、仮定より、
b1+b2+…+bk+1≥1+m+b3+b4+⋯+bk+1≥k+1
{b1b2}b3⋯bk+1=mb3⋯bk+1=1
仮定における、数の個数は今回は
k個である。
m~
bk+1の個数は
(k+1)−2+1=k個となる。
n=k+1の時も成り立つ。
したがって、数学的帰納法によってすべての自然数において成り立つことが分かった。
また、等号成立条件はa1=a2=a3=⋯=anとなる。