はるか
ふゅか
1. 冪零行列とは
冪零行列(べきれいぎょうれつ、nilpotent matrix)とは、ある整数 k に対して、その行列を k 回自乗(自分自身を掛ける)すると零行列(全ての要素がゼロの行列)になる行列を指します。
行列
A が冪零行列であるとは、以下の条件を満たす
k が存在します。
Ak=0
ここで Ak は行列 A を k 回掛けたもの、そして 0 は零行列です。
はるか
1.1. 例
例えば、以下の 2×2 行列 A を考えます。
A=(0010)
この行列 A の二乗を計算してみると、
A2=A⋅A=(0010)⋅(0010)=(0000)
となり、零行列になります。この場合、k=2 で A2=0 となるため、この行列 A は冪零行列です。
1.2. 冪零行列の固有値
冪零行列 A の固有値は、常にゼロです。
行列 A の固有値 λ と対応する固有ベクトル v は次の方程式を満たします。
Av=λv
この両辺に A を k 回作用させると、
Akv=λkv
しかし、A が冪零行列であるため、Ak=0 であることから、
0⋅v=λkv
したがって、v=0 であるためには λk=0 でなければなりません。したがって、固有値 λ は必ずゼロです。
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