更新:2025/01/26
確率空間の意味と性質、具体例について


はるか
確率空間の基本、理解してる?

ふゅか
うん!でも改めて整理したいな。特に全体をどう見るかってところ!

はるか
標本空間を意識する。まずはそれが要。
目次
1. 確率空間
確率空間(かくりつくうかん)は、確率論の基本的な概念で、ランダムな事象を数学的にモデル化するための枠組みです。確率空間は次の3つの要素で構成されます。
- 標本空間
- 事象集合
- 確率測度
2. 標本空間(Sample Space, 記号: \( \Omega \))
標本空間はランダムな実験や試行のすべての可能な結果の集合を表します。標本空間の要素のことを根元事象と呼びます。
2.1. 例:
- サイコロを1回振る場合:$$ \Omega = \{ 1, 2, 3, 4, 5, 6 \} $$
- コインを1回投げる場合: $$ \Omega = \{ \text{表}, \text{裏} \} $$

はるか
標本空間は実験の結果の全パターン。コインなら表と裏。サイコロなら1から6。
3. 事象集合(Event Space, 記号: \( \mathcal{F} \))
標本空間の部分集合からなる集合です。これらの部分集合は「事象」と呼ばれ、確率を割り当てる対象になります。
\( \mathcal{F} \) は、特定の条件を満たす「集合の集合」として構成されます。この集合のことをσ-加法族(シグマ代数)と呼びます。
3.1. σ-加法族
σ-加法族とは
- 空集合を含む:
\[ \phi \in \mathcal{F} \] 空集合(何も含まない集合)は必ず \( \mathcal{F} \) に含まれます。 - 補集合を含む:
\[ A \in \mathcal{F} \implies A^C \in \mathcal{F} \] \( \mathcal{F} \) に含まれる任意の集合 \( A \) の補集合 \( A^C \) も必ず \( \mathcal{F} \) に含まれます。- 補集合:\( A^C = \{ x \in \Omega \mid x \notin A \} \)
- 和集合を含む: \[ A_i \in \mathcal{F}, \, i \in \mathbb{N} \implies \bigcup_{i=1}^\infty A_i \in \mathcal{F} \] \( \mathcal{F} \) に含まれる任意の部分集合列 \( \{ A_1, A_2, \dots \} \) の可算和集合(無限の和集合)も \( \mathcal{F} \) に含まれます。
3.2. 標本空間 \( \Omega = \{1, 2, 3\} \)の例
σ加法族の条件を満たしているか確認してみましょう。
- \( \mathcal{F} = \{\phi, \{1\}, \{2, 3\}, \{1, 2, 3\}\} \) を考えます。
- この \( \mathcal{F} \) は次を満たします:
- \( \phi \in \mathcal{F} \)(空集合を含む)
- \( A = \{1\} \in \mathcal{F} \implies A^C = \{2, 3\} \in \mathcal{F} \)
- \( \{1\}, \{2, 3\} \in \mathcal{F} \implies \{1\} \cup \{2, 3\} = \{1, 2, 3\} \in \mathcal{F} \)
4. 確率測度(Probability Measure, 記号: \( P \))
各事象に対して「確率」を割り当てる関数です。確率測度は次の3つを満たします:
- 確率は 0 以上である(非負性):$$P(A) \geq 0 $$
- 標本空間全体の確率は 1 である:$$ P(\Omega) = 1 $$
- 互いに排反(重なりがない)な事象 \( A_1, A_2, \dots \) の和集合の確率は、各事象の確率の和に等しい(加法性):
$$P\left(\bigcup_{i=1}^\infty A_i\right) = \sum_{i=1}^\infty P(A_i)$$
5. 確率空間の記法
確率空間は、次のように記述されます: \[ (\Omega, \mathcal{F}, P) \]
- \( \Omega \):標本空間
- \( \mathcal{F} \):事象集合(σ-加法族)
- \( P \):確率測度